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コーヒー生産の透明性

透明性、そして倫理的持続可能や環境的持続可能は、スペシャルティコーヒーを語る上で欠かせないキーワードです。

でも、それらは一体、具体的に何のことをさすのでしょう? いまいちよくわからないという方が多いかと思います。日本人の4倍コーヒーを飲む、ここフィンランドでも、これらのキーワードについて知っている人はさほど多くないのが現状です。

コーヒー生産における問題点とは

コーヒー生産の第一の問題点は「今、飲んでいるコーヒーのルートがたどれない」という点です。コーヒーの作り手は明解、生産国の農家です。ですが、その後、たくさんの中間業者を介すのがコーヒー産業の特徴。時には最大20人を介すこともあります。各々の中間業者からマージンを引かれ、生産者が手にするのは雀の涙の収入。生活の維持すら難しい賃金しか渡らないということがコーヒー業界においてはよくある話なのです。

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ダイレクトトレード(直接取引)のメリット

この問題を解決策のひとつは「ダイレクト・トレード」(農家との直接取引)によってコーヒー豆を入手する方法です。 スラープと提携しているロースタリーの多くは「ダイレクト・トレード」で豆を仕入れています。ダイレクト・トレードには3つのメリットがあります。

  1. 生産者は代金の100%を手にすることができる点
  2. ロースタリーが直接生産者とコミュニケーションをとることで、正確な栽培情報を得ることができる点
  3. 生産過程で生産者とロースタリーの信頼関係ができるようになる点

では1)のメリットから少し掘り下げてみましょう。 多数の中間業者が入った場合、1杯300円のコーヒーの中で、生産者が受け取る金額はいくらくらいだと思いますか? もちろん、何人の業者が入るのか、小売業者がどのくらいの利益を見込んでいるのかにもよりますが、大雑把に約1%、3円と言われています。しかもこの金額は、相場価格の下落によってもっと安くなる可能性もあります。こんな状況では、生産者は日々の生活に手一杯で、コーヒーの品質向上に投資をする余裕がありません。

一方で、ダイレクト・トレードをすれば、生産者は中間業者が抜くはずだった分の金額を上乗せした収入を手にすることができます。より豊かな生活を送ることができますし収入の中から、コーヒー栽培への投資(新しい道具を買ったり土地改良をしたり)をする余裕も出てきます。こういった投資が高品質なコーヒー豆の生産へと繋がり、生産者はもっと多くの収入を得るという幸せのループを作るきっかけができます。

2)ロースタリーが生産者と直接会話をすることによって、正しい生産情報を得ることができるのも大きなメリットです。「XX農園の南斜面で作られたかトゥーラ種」とか「清潔な水槽でウォッシュド処理されたブルボン種」といった情報がクリアに見えてきます。これを透明性がある(高い)といいます。または、豆が誰によって作られて、誰を介して提供されているか追跡(トレース)できることからトレーサビリティがある(高い)と表現することもありますが、いずれもほぼ同じ意味で使われています。

3)ロースタリーと農家の間にコミュニケーションが増えることで「信頼関係」、つまり「絆」が生まれます。ロースタリーは収穫前に生産者から情報を得て、高品質な豆を一定量、確保することができますし、生産者はロースタリーと密に連携をとることで収穫前から販売先を確保し、安定した収入への見通しが立てられるようになるのです。こういった相互提携により、お互いにwin-winの関係を構築できるようになります。

スペシャルティコーヒーの輸入者

とはいえ、すべてのロースタリーがダイレクト・トレードによってコーヒー生豆を購入できるわけではありません。では、どこで透明性とトレーサビリティのある生豆を買うことができるのでしょうか?

生産者とロースターを繋ぐスペシャルティコーヒーに特化した輸入業者の出番です。 これらの輸入業者は、豆の品質に特別な基準を設けています。公正価格で購入することはもちろんのこと、産地や精製所の環境なども厳しくチェック。生産者とロースタリーが同じ価値観を共有しているかを確かめながら、コーヒーを仕入れています。”Nordic Approach” や ”Falcon”, “ThiSideUp” など、フィンランドにはマイクロロースタリーが安心して豆を購入できる輸入業者がいくつか存在しています。

コーヒーの価格

コーヒー産業が抱える大きな問題の一つは、コーヒー農園の収入があまりにも安い点です。農園の経営はおろか、日々の生活が維持できるかどうか不安になるほど低賃金の場合もあります。農家の収入を3つのレベルに分類すると以下のようになります。

  1. 貧困ライン(最低生活水準以下)
  2. 最低賃金
  3. 十分な賃金+農園や生産ラインの改良に費やせる資金

私たちも提携先のロースタリーも、上記の3のレベルを目指したいと思っています。 コーヒー農園が得た収入の一部で生産者が農園を改良し、コーヒーの品質を上げるための投資として使えるのが最高の形です。

スラープを介することで、中間業者が不必要となり、焙煎家とロースタリーの間に良好で長期的な関係を支援できればと常に願っています。

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認証コーヒーの理想と現実

認証コーヒーについてご存知でしょうか?コーヒー生産者の支援や地域の環境保全、品質管理などを目的として設けられたもので、認証コーヒー豆の生産者には、公正な価格が保証されるシステムです。

現在、世界には様々な認証コーヒーが存在します。理想的なシステムのように感じますが、よいことばかりではありません。コーヒーが認証を受けるために、生産者は多くのお金を払わなければならない場合もあります。ですので、認証システムだけがコーヒーの栽培者を救うわけではないことを知る必要があります。

持続可能な生産

倫理的持続可能性

倫理的持続可能性。理解するのが難しいように見えますが、一言でいえば「コーヒー生産の未来があるべき姿で続いていくこと」です。

私たちの目指すのは「今がよければいい」という事なかれ主義的なコーヒー栽培ではありません。コーヒー栽培に投資をし、生産方法を改良し、コーヒー生産者が長きにわたって十分な収入を得ることのできるビジネスモデルを目指しています。

環境的持続可能性

環境的持続可能なコーヒー生産は、直近ではブラジルの森林火災の一件で世界から注目を浴びました。この目指すところは、これから先も安定してコーヒー栽培ができる環境を保持しながらコーヒー生産を続けることです。具体的には農園の土壌の質や生態系の維持など。コーヒーの育つ環境までもが味に反映されるスペシャルティコーヒーでは、健全な環境でのコーヒー栽培はとても重要です。豊かな自然の中で育ったコーヒーは滋味溢れた高品質のものになります。

コーヒーの未来

コーヒーに未来について、スラープが掲げるビジョンに賛同者は、これからも増え続けると信じています。すでに解決すべき問題は見えていますので、これらにひとつづつ取り組んでいくことが、今やるべきことなのです。 100年後も、今と変わらずコーヒーを楽しむために、まずできることから始めたい、そのためにスラープは前進し続けるのです。